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Sky Wish ~ムクの浮島~ 第4章

第4章

 

着陸後、皆で格納庫へと降り、ハッチをあけフルーラで降ろす荷物の準備をしていると、ヤーガが人懐っこい笑顔で入ってきて出迎えた。

「やあ、いい日にきたね、今日はムクの飛行大会だよ。そのせいで係りのものはみんな出払っているんだ。仕事はあとにして、見物でもしてくるといい」

リクとアリシアは目を合わせそわそわし始めた。せっかく来たのに、見逃してはたまらない。グレッグ船長を見ると「仕事にならんならしょうがないな」と言い、行け行けと手を振った。みんなは一斉に歓声を上げ喜んだ。

「会場のよく見える場所まで送ってあげるよ」

ヤーガはそう言ってから、格納庫に隣接しているムクの厩舎に目をとめた。

「ああ、グース号はいいムクを持っていたね。どうだい、せっかくだから誰か大会に出場してみたら。見るより出たほうが百倍楽しいぞ」

グース号の乗組員は、今ではリクとアリシア以外ほとんどムクに乗っていない。

ヤーガの言葉を聞いてリクは目を輝かせた。

「出場できるの!?」

「ああ、まあ大丈夫だろう。本当は、受付は前日までなんだが、オレの名前を出せばいけるはずだ」

ヤーガはウインクして見せた。

リクは抱えていたもやもやが晴れる気がしてアリシアを見た。飛ぶことが誰よりも上手でそれが大好きなアリシアが、このまま小さな島に埋もれてしまうのが、リクにとって何よりも納得がいかなかった。でも、飛行大会に出れば、勝ち負けはさておき、10歳のアリシアがこんなに巧みなムク乗りであることをみんなに伝えることができる。このまま飛ぶことがなくなったとしても、きっと人々の心にアリシアのすごさは残るはずだ。

「アリシア、一緒に出よう!」

リクが張り切って言った。アリシアもリクを見て大きくうなずいた。

「うん、出たい!」

リクはアリシアと目を合わせ、二人で手を挙げた。

「出ます!!」

「おっと」

ヤーガは、予想外の二人が立候補したことに驚いた。

「リクとアリシア、だよな。また大きくなったな。……いや、しかし相手は大人ばかりだぞ。まあ大会に年齢制限はないから、出られないわけではないが……」

ヤーガは腕組をして二人を見た。その興奮が二人の目から読み取れ、困ったヤーガはグレッグ船長に目を向けた。グレッグはそれをおもしろそうに見ながら言う。

「こいつらは、その辺の大人よりよく飛ぶぞ」

「ほほう」

グレッグの言葉にヤーガは心を動かされたようだった。

「グレッグ船長がそこまで言うとは……。おもしろい。是非見てみたいものだ」

グレッグのお墨付きをもらったため、ヤーガは二人の出場を認めてくれた。

「やったぁ!!」

二人は歓喜の声を上げて飛び上がった。

「しかし油断するなよ。中には飛行妨害してまで勝とうとするものもいる。上空で救急医療のスタッフがムクに乗って待機しているくらいだ。危険は常に隣にあると思って用心するんだぞ」

「はい!」

二人は背筋を伸ばし、元気よく返事をした。

「アリシアは僕が守る。安心しておもいっきり飛ぶといいよ。」

頼もしく言うリクを見て、両親は心配ながらも快く二人を送りだすことにした。

「応援しているから。でも無理しないでね」

ミナは二人の肩を抱き寄せた。

「ここから、いつもの港の方向に飛べばその先に青い旗がたっていて、そこが飛行大会の運営本部だ。念のためこれを持っていくといい」

急いでムクたちの飛行の準備を始めた二人に、ヤーガは走り書きした推薦状を渡した。

「ありがとう、ヤーガさん」

二人はお礼を言うと、ムクの鞍にまたがってハッチから外へと出た。

隣に停泊しているザイオンの黒い船が視界の大部分を占めて驚いたが、気を取り直し、声援を送るみんなに手を振って、リクとアリシアは大空へと舞い上がった。

 

 

華やかな建物が立ち並ぶ街は、かつて見たことのないほどの熱気に包まれていた。会場は所狭しと多くの観光客で埋め尽くされ、人々は空を見上げては首をもみほぐしている。

浮島の上空では、あまりの混雑に着陸をあきらめた飛行船数台が、通常は許されない上空からの見物の許可を取り付け、悠然と浮かんでいた。

スタート地点である小高い丘からそれらの様子がよく見え、リクとアリシアは、この見ることすら諦めていた憧れの飛行大会に参加できたことがまだ信じられず、夢見心地でいた。

運営本部で受付をしたときは、幼い二人を見て係りの人もけげんな顔をしていたが、ヤーガの推薦状を見せるとすんなりと参加登録をしてくれた。

大会の開始を前に立ち並ぶムクたちは、そのムク乗りに発破をかけられて鼻息を荒くし、赤ムクにいたってはお互いを威嚇しあっていて近づくのも恐ろしいくらいだ。大きくてうろこも硬そうなムクと大人のムク乗りたちの中にいて、リクとアリシアは確実に浮いていた。小柄でスマートなムクにのった子供の二人を、他のムク乗りたちは鼻で笑い、まるで相手にしていなかったが、二人には全く気にならなかった。

「リク、すごいね。こんなにたくさんのムクがいるよ。あの赤ムク大きくて目が恐い」

震えるまねをして見せたが、ちっとも恐がっていないアリシアは、興奮しながらあたりを見回している。これから、先に説明してもらった大会のコースをこのムクたちと飛ぶことをとても楽しみにしているのだ。

リクもスタートを前にして心が躍っていた。アリシアは相当飛べる。それはリクが一番よく知っていた。どこまでついていけるかはわからないが、ただのムクの運動のためだけじゃないアリシアの思う存分の飛行を見ることを心から楽しみにしていた。

リクは、感覚で飛ぶアリシアの飛行技術を見て学び、かなり努力してきた。自分の飛行がこの大会に通用するものかどうか、これから船乗りとして生きていくことを決意したリクは確かめてみたいとも思っていた。

「僕を気にせずおもいきり飛べよ、アリシア。僕はおまえを見てムクの飛び方を教わった。最後に、アリシアの飛行を全部見せてくれよな」

最後、と自分で言ったとたん胸がちりちりと痛んだ。

「リク……」

はしゃいでいたアリシアは、眉間にしわを寄せてリクを見た。

「もう会えなくなるわけじゃないんだよ。それに私、リクのお嫁さんになるって決めているんだから。そしたらまた、たくさん一緒に飛べるんだから」

アリシアはリクの顔をのぞきこんで怒ったように言った。そして、笑顔になって、

「離れている間に浮気したら、許さないからね」

と釘を刺した。

リクは思わず噴き出した。そう、アリシアはいつだってリクの心を温かくしてくれる。初めてアリシアを見つけたときから、そうだったのだ。ずっと妹のように大切にしていたアリシアに、急にませたことを言われて驚いたが、離れても何かでずっとつながっていられるような気がした。

「なあに言ってんだよ。子供のくせに。……まあ、ラーザに寄るときは必ず会いに行くから……」

リクはなんとなく照れながら、そっぽを向いて言った。

「うん!」

アリシアは満足げに笑顔でうなずいた。

そのとき、横のムク乗りたちがこそこそと話している声が聞こえてきた。

「おい、あれ、ここんとこ優勝つづきのレオノールだぜ。やっぱり今年も出てきたか。これでオレの優勝はなくなったな」

「毎回下から数えたほうが早いヤツが何言ってんだよ。それよりも、あっちを見ろよ。悪名高いザイオンの連中だ。名産の鎧兜でお出ましだぜ。軽くて丈夫が売りらしいが、この飛行大会には不釣合いな出で立ちだぜ。まるで戦争にでも行くみたいだな」

「いい宣伝の場だからな。前回もズールってヤツが準優勝しているから、軽いのは本当かもしれない。しかし、奴ら相当荒いことしてるからな」

「ああ、あいつらには近づかないほうがいい」

リクはその噂話の視線の先を見た。確かに黒い鎧兜をまとったムク乗りたちが、赤ムクにまで装備させてスタート地点の一部を陣取っている。そのまわりには見えない壁でもあるかのように、誰も近づいていなかった。

そして、最初に噂されていたレオノールという男の方を、ザイオンのムクのりたちもこそこそと耳打ちしながら見ている。

レオノールは、まわりの視線やざわめきを気にする様子もなく平然と空の彼方を見ていた。その出で立ちはりりしく、そのムクですら気品を感じさせるうろこの輝きを放っていた。

「アリシア、あの人が前回の優勝者らしいぞ」

アリシアはたいして興味もなさそうに「ふーん」と言い、ちらりと眺めただけだった。

 

 

人々のスタートを待ちわびるざわめきが、ファンファーレの音とともに歓声へと変わった。島中に高らかなトランペットの音が響きわたり、観客の興奮は最高潮へと達した。

「お集まりの皆様!今年もこの日を迎えられたことを心より感謝いたします。各地から集まったつわものたちにどうか惜しみない拍手をお送りくださいませ!」

眼下から沸き起こる地響きのような歓声と拍手に、リクたちの心は弾んだ。

「行くぞ、アリシア」

「うん!」

「ここに飛行大会の開催を宣言いたします!」

その瞬間、スタートの合図である花火が四方から打ちあがった。

人々の歓声とともに、ムクたちが次々と空に舞い上がり、リクとアリシアも目を合わせてから、ムクの翼を大きく広げて空へと飛び立った。

快晴の空は、勇ましく飛び立つムクたちで埋め尽くされ、スタート地点のすぐ下は大きな雲に覆われたかのように暗くなった。あまりの混雑ぶりにスタートしてすぐにムク同士で衝突して地上に落ちていくムク乗りもいたが、すぐ上空に待機していた救急班が救出に向かった。

リクとアリシアは示し合わせたわけではないが、こうなることを予想して上空高くまで飛び上がっていた。先へ進むよりこの混雑を抜けたほうが賢明だ。前方を見ると、例のレオノールも同じ高度を飛んでいるのが見えた。

説明された飛行コースでは、まず始めに、市街地の上空に設置してあるいくつかの輪をくぐることになっている。飛行技術を観客に見せて楽しんでもらうのだという。

二人はレオノールに続き、輪の目印である赤い旗を目指して急降下した。既に眼下では、運良く混雑を逃れたムクがその輪をくぐろうとしている。しかし、翼をうまくたためず、輪にひっかかってバランスを崩していた。歓声が落胆の声に変わる。そのあとを猛スピードで降下したレオノールが、その勢いのまま、なんなく輪をくぐった。人々の活気は持ち直され、さらに激しい歓喜の声が上がった。

「あのスピードで輪を抜けるなんて……。計算しておかないと手前で翼をたたむタイミングが難しいぞ」

リクはつぶやくと前を飛ぶアリシアを見た。二人にとってこんな障害物の中を飛ぶのは初めてだ。アリシアも慎重にスピードを落としたようだった。そうしているうちに何頭かのムクが輪をくぐった。例の黒い鎧兜のザイオン軍団も器用に通過している。

その後ろをアリシアが難なく輪をくぐった。リクは慎重にあとに続き、翼をたたむタイミングをつかんだ。一度できればあとは問題ない。アリシアはどんどんスピードをあげ、何頭ものムクを軽く追い抜き、次々と輪をくぐっていった。リクもなんとか後に続く。

最後の輪を前にして、アリシアの前方にいたムクが翼を輪に引っ掛け、アリシアの進路をふさいだ。

「危ない!」

リクが叫ぶと、アリシアはひょいっと翼を縦にして、難を逃れていた。そしてそのまま、リクの位置まで下がると、

「グース号のみんなが3つ目の輪の下にいたよ」

と楽しそうに教えてくれた。

「まったく……」

一瞬ひやりとしたリクは、余裕の面持ちでいるアリシアに苦笑した。リクは必死で輪をくぐってきたというのに、アリシアには眼下に目をやる余裕があったというのだ。

前のムクがひっかかったため最後の輪が少し小さくなっていることに気づき、慎重にくぐり終えると、前方にいるのはレオノールと、ザイオン軍団の赤ムクが数頭だけとなった。

この輪くぐりで相当ふるい落とされたようで、後方に続くムクたちもだいぶまばらとなっている。

「おもしろかったー!もう一回やりたいねー!」

前のアリシアが満面の笑みで振り返り、叫んでいた。

次は折り返し地点のポールでUターンをし、また市街地へと戻らなければならない。折り返しが膨らみすぎると、大きく時間をとり後ろに迫るムクに追い抜かれる可能性がある。

リクがタイミングを計算していると、正面から、すでに折り返してきた先頭のレオノールが見えた。

「さすがだな。もう来たのか」

リクが感嘆の声をもらしていると、アリシアに追い抜かれリクの前の位置となったザイオンの黒兜のムク乗りが、口に短い筒をあててレオノールに向けているのが見えた。

「あれは……毒矢だ!」

リクはとっさにスピードをあげ、その男がレオノールとすれ違う間際に、二人の間に割って入る形で黒兜の男を追い抜き、その男の視界をさえぎった。

「ちっ!」

黒兜の男の舌打ちが聞こえた。レオノールは、ちらりとリクのほうに目を向けて、悠然とすれちがっていった。

リクは今の出来事を目の当たりにして驚いていた。

「ヤーガさんの言うとおりだ……」

スタート地点の男達の言葉も思い出していた。

『奴ら相当荒いことをしている』

この大会でこんなあくどいことをしてまで勝ちたいというのか。優勝という名誉が不正の上に成り立っていても空しくはないのだろうか。

上空には何人かの監視員がいるとはいえ、すべてを見通すのは無理だ。その隙をついてザイオンの連中はどれだけこんなことをしているのだろう。

リクは前を飛ぶアリシアを見た。これまでの飛びっぷりを見て到底最後までついていくのは無理だと思っていたが、こんな状態では心配で離れるわけにはいかない。

「ルル、ちょっと無理するけど頼むぞ。アリシアを守らないとな」

ルルはキーっと鳴いて、了解してくれたように見えた。

先ほどのように急にスピードをあげたり飛ぶ体勢を変えたりすると、ムクにかかる負担は大きくなる。そのため、このコースのように障害物が多い場合は、なるべく安定した状態で飛ぶことが体力を温存できる一番の方法だ。しかし、今はゴールすることよりもアリシアを守ることがリクにとっては一番大事なこととなっていた。

アリシアを見ると、軽々と折り返しポールをUターンしていた。すれ違いざまに笑顔で手を振っている。リクは同じ角度から入ったが、やはりアリシアより少しふくらんで折り返すこととなった。それでも、後ろからくる先ほど追い抜いた毒矢の男よりはかなり小さくまわったため、男との距離をだいぶ開くことができた。

「あいつに追いつかれることはないだろう。でも問題は前の黒兜だ。これからアリシアがどんどん追い抜いていったら、何をされるかわからないぞ」

次は市街地に設営されている審査員席の前の横断幕を低空飛行でくぐらなければならない。今までの障害を越えてきたムク乗りを審査員に見せるためだ。

街の方から大きな歓声が聞こえてきた。先頭のレオノールが横断幕をくぐったようだ。

「そういえば3番目の輪の下にグース号のみんながいたんだよな」

リクは思い出してそのそばを通るときだけ観客席に目を向けた。しかし、かなりの速さで飛ぶムクの上から、街を埋め尽くすほどの人の中、みんながどこにいるかなどさっぱりわからなかった。

「アリシアはよく見つけたな」

改めて、アリシアの目のよさに感心した。

前のムク乗りたちは皆、横断幕を難なくくぐっていく。そのたびに大きな風が巻き起こり観客たちを圧倒させ、その迫力を体感させた。そのあとをアリシアとリクが低空飛行で続けてくぐると、観客や審査員席からざわめきと賞賛の声があがった。

「子供じゃないの?」

「すごいぞ!」

「チビがんばれー!」

思いがけない声援に驚きながらもリクはうれしくなった。アリシアも振り返り笑顔をみせている。

次に目指すのは、島の郊外にそびえ建つ煙突群だ。劣化したアリウムガスの排気口としての役割を持つそれは、飛行大会ではムク乗りの技術を判定する良いコースとなっている。煙突間をジグザグに飛び、スピードに反映されるその技を競うのだ。

市街地を抜けて煙突に向かうルートは大きくカーブしているため、アリシアの前に何頭のムクがいるのか確認できた。

先頭は依然レオノール。そのあとをザイオンの赤ムクが2頭。そしてアリシアに続きリクの順だった。

後ろを振り返ると市街地上空のムクの群れが遠くに見える。リクの後ろにはかなりの差がついていた。ここまでこれただけでリクは満足だった。僕もこれだけ飛べる。その自信を得ただけで充分だった。

この先はアリシアのために飛ぶ。リクはそう決意していた。

島で一番高い建物である頑強な煙突群は、コース内のもので10本ある。それぞれ空に向かって一直線に伸び、その存在を主張している。

生活、文化、技術の発展にともない島の重量はどんどん増加した。それを支えるためのアリウムガスの生産は年々増やしていかざるを得ない。そのため排気口も遺跡としてあったものだけでは足りず、次々と増設され、今ではどこの島も煙突が数多く建てられていた。

前方でレオノールがその煙突のコースに入ったのが見えた。

アリシアは、市街地を抜けた開放的な田園地帯で調子よくスピードをあげ始めたため、前のムクたちとの差がかなり縮まっている。リクも続いてスピードをあげ始めたとき、アリシアが煙突の手前でザイオンの赤ムクを一頭追い抜くのが見えた。

追い抜かれた黒兜の男は、その瞬間かなり驚き、そして抜かれたのが子供とわかるや激しい怒りをあらわにしていた。あたりを見回し、監視員が煙突コースの中腹までいないことを確認すると、懐から何かを取り出すようにもぞもぞとしている。

かなり近づいてはいたが、後ろにいたリクにはそれが何かわからなかった。しかし、男が右手を大きく振りかぶったときそれが太陽のもとにさらされて光を反射したため、小型のナイフだとわかった。刃先はアリシアのほうを向いている。

「やめろ!!」

とっさにルルをアリシアと男の間に割り込ませたが、すでにナイフは解き放たれ、その刃はリクの左上腕に突き刺さった。

「くっ!」

激痛が体をかけめぐる。左腕が、激しく燃えているかのように熱くなっていった。

ルルはコントロールを失い一時ふらついたが、リクは手綱をひきなおし、体勢を立て直した。そして腕にささったナイフを歯をくいしばって抜くと、追い抜いた黒兜の男を振り返って睨みつけた。

男は悪びれもせず、口元をにやりと歪ませて、リクに追いつこうとスピードをあげた。

ナイフの勢いはこの上空の風でだいぶそがれていたため、傷はそれ程深くはないと判断したリクは、ナイフを眼下の田園地帯に捨て去り、痛みをこらえてスピードを上げた。すぐ前には最初の煙突が迫っているためそろそろスピードを落とす頃合だ。後ろの男は手傷を負わせた子供をすんなり抜くことができずに焦りの色を見せている。

リクはそれでもさらにスピードをあげて、最初のカーブに入った。男もつられて同じスピードで煙突間に入る。リクはさっきのアリシアのUターンを思い出し、ルルを思いきり縦に寝かせて、小さなふくらみで次の煙突間に入った。対抗した男は同じスピードで続いたが、その速さでは曲がりきることができず、「うわあ!」と大きな悲鳴が後ろから聞こえた。リクが振り向くと、男は堅固な煙突に正面衝突していた。

叫び声を聞きつけ救急隊が飛んできて、落ちていく赤ムクと黒兜の男を救出に向かった。

スピードを緩めその様子を見て、リクは大きく息を吐いた。

「アリシアが追い抜くたびにこれか、体が持つかな」

顔を歪め左腕を見ると、それほど出血はしておらず痛みにもなれてきた気がする。

それにしてもあのスピードでよくあのカーブを曲がれたものだと自分で感心した。そうやってアリシアを見て一つずつリクは上達してきたのだ。もう最後なのだと思うと、寂しさにまた襲われたが、もう一頭の赤ムクのことを思い出し、気持ちをふるい立たせ、ルルのスピードをあげた。

ルルを左右交互にすばやく寝かせ、徐々に慣れてきてスピードはさらにあがった。

だいぶ先でやすやすとジグザグ飛行をこなしているアリシアとの差も少し縮めることができた。そして、アリシアとその前の赤ムクとの差もだいぶ縮まっている。

最後のザイオンの赤ムクだ。あの黒兜の男が前回の準優勝者のズールなのかもしれないとリクは思った。

早くも煙突コースを終えたレオノールがUターンして市街地へと戻るルートに乗った。ズールにとってすれ違うときが攻撃の絶好の機会に違いない。このときズールはまだ煙突の間にいたが、攻撃のためにかスピードを落として、鞍の下に手を入れている。

そのときアリシアがふいにそのズールを追い抜いた。

ズールは宿敵レオノールしか見ていなかったのか、それとも後ろにいるムク乗りが子供だと油断していたためか、アリシアに追い抜かれたことにひどく狼狽して、カーブが大きくふくらんだ。

慌てて体制を立て直そうとしている間にレオノールはズールとすれ違っていった。

「くそ!」

ズールの後ろについたリクにはそのはき捨てるような声が聞こえ、まずいと思った。鞍の下から取り出したのはどこにどう入っていたのか、弓矢だった。大胆にも、ズールはUターンで戻ってきたアリシアに向かって矢をあてがい弓をしならせたのだ。

「まずい!間に合わない!」

アリシアとズールの間に入るには距離がまだありすぎた。リクは必死でスピードをあげた。

「ピー!!」

そのとき大きな笛の音が聞こえた。

その音とともに上空から3頭のムクが腕章をつけた人たちを乗せて、ゆっくりと下降してきた。

「監視員だ!」

ここはもう最後の煙突だ。監視員がいないわけがなかったが、視界に入っていなかったためすっかり忘れていた。

「そうだよな。そうそう好きにはさせられないよ」

ズールも焦りのためか、監視員の存在を無視して、かなり乱暴なことをする。

アリシアはその間に敏速な飛行ですれ違っていた。大きく安堵のため息をついたリクは、監視員に囲まれてすっかり意気消沈したズールを横目に最後のカーブを曲がってUターンに入った。

あとは市街地まで戻り、最後の障害を飛ぶのみだ。しかし、リクはスピードをゆるめ、相棒の青ムク、ルルをのぞき見た。

疲れきっているのがよくわかる。こんなに無茶な飛び方をしていたら、無理もない。アリシアとの差はどんどん開いていくだろうが、しかたがない。ここまで、雑な飛行につきあってくれたルルに感謝の気持ちでいっぱいだった。

「ありがとうな、ルル。ここまで来たらアリシアはもう大丈夫だ」

レオノールは紳士的なムク乗りだと感じていたため、もうアリシアに危険なことは起こらないだろう。リクの仕事はもう終わったと思った。

大きく息を吐き顔を上げると、信じられない光景が目に飛び込んだ。遠く離れたはずのアリシアが、逆走して戻ってきたのだ。リクは驚いて叫んだ。

「何してるんだよ!早くレースに戻れ」

「レースなんてどうでもいいよ。リクのほうが大事だよ!」

アリシアは泣きそうになりながら答えた。視線はリクの顔と左腕の傷をいったりきたりしている。

「あ……」

さっきすれ違ったときにリクの傷を見てしまったに違いない。先ほどより出血しているらしく、服の左腕部分が赤く染まっていた。

「早く手当しなきゃ」

アリシアは悲壮な顔で手をあげると、救急班を探してあたりを見回した。

リクは焦った。ここまできてアリシアの飛行を止めたくない。それだけは絶対嫌だ。

「そんなことより、レースに戻ってくれ、アリシア。僕は大丈夫だから。」

そういうと、アリシアはだだっこのように首を大きく振った。

「やだよ、リクが死んじゃったらどうするの?あたし、リクと一緒にいる!」

目からはこらえていた涙が溢れていた。

リクはそんなアリシアを見て胸が痛んだ。

「ごめん、アリシア……。でもこんな傷どうってことないよ。全然痛くないし、血ももう止まっている」

リクは少し大げさに平気を装った。

「頼むよ、アリシア。僕はアリシアの飛行が見たいんだ。もう、アリシアと一緒に飛べなくなる。最後に全部見ておきたいんだよ」

リクはゆっくりと、しかし力強く言った。最後までアリシアを飛ばせたい一心だった。

アリシアはそんなリクを見て、溢れ出す涙を両手でぬぐった。

「……リクは、……リクはあたしに優勝して欲しいの?」

上目づかいの赤い目で聞く。

「そうだよ。…というか、おもいっきり楽しく飛んでいるアリシアが見たい。……僕は飛んでいるアリシアを見るのが大好きだから」

並走しながら、アリシアはじっとリクの目を見ていた。そして、口を真一文字にして涙をこらえると、大きくうなずいた。

「わかった」

そういうとアリシアは、そのままスピードをあげてリクから離れた。目をごしごしとこすっているのが後ろからでもわかる。そして振り返り、笑顔を作って叫んだ。

「最後じゃないからねー!」

その泣き笑いの顔を見て、リクは気付いた。

みんなの記憶にとどめたいとか、もったいないとか、そういうことでアリシアを飛ばせたかったんじゃない。ただ自分はアリシアの飛んでいる姿を見ていたかったんだ。できれば、この先もずっと。

ルルがキーっと鳴いた。

「ルル……。もう少し、がんばれるか?僕のわがままにつきあってくれるか?」

ルルは了解した、とでも言うようにスピードをあげてくれた。

「ありがとうな、ルル」

アリシアはどんどんとスピードをあげていて既に小さくなっていた。それにしても、アリシアは速かった。もう市街地上空に到達したようだ。こんなスピードは今まで出していなかった。比較にならない速さだ。リクはあとを追いながら、すっかりあきれていた。

ここまでの飛行はなんだったんだ。アリシアにとっては、いつものようにただ僕と一緒に飛んで、おもしろいコースで遊んでいただけにすぎなかったのだ。

これがアリシアの本気の飛行。アリシアの実力なんだ。本当にとんでもないやつだ。

「アリシアにはやっぱりかなわないなあ」

リクはなんだかうれしくて、そしておかしくもなり笑いだした。

リクがなんとか市街地上空まで戻ってくると、先頭のレオノールが最後の障害に入ったところが見えた。歓声が一気に高まる。

最後は、別の低位置の横断幕をくぐり、そこから急上昇で上空高くに設置してあるポールで折り返し、急降下で審査員席目前のゴールをくぐらなければならない。いかに垂直にスピードを維持して上昇するかと、地面に近いゴールにどこまで接近して速度を落とすかが勝負を分ける。

上昇し始めたレオノールの後に、風のように翔けるアリシアが最初の横断幕をくぐった。そしてほとんど直角に上昇し始める。

「すごい……。もうレオノールに追いついたのか」

リクもスピードをあげた。アリシアの技術を見落とすわけには行かない。目にやきつけておきたかった。

あまりの速さで登場したアリシアに観客たちも度肝を抜かれて一気に視線がアリシアに移動した。

「女の子よ」「もうここまで上がってきたのか」「なんでこのスピードで上昇できるんだ」

人々は口々に言い、感嘆は大きな声援へと変わっていった。

レオノールは上空高くまで舞い上がりポールを超えて下降に入った。アリシアもそのあとに続く。確実に二人の差は縮まっていた。

「どっちだ」

「まだレオノールのほうが先だぞ」

「おいおい、こんな興奮する飛行大会は初めてだ」

二人を応援する観客たちで街は一体となり、二頭のムクに視線は釘付けとなっている。

二人ともムクの翼をたたんで真っ逆さまに急降下し、わずかにレオノールが先をいっているが、そのスピードは互角だった。

「やはりレオノールか」

「だが、このスピードでは二人とも地面に衝突するぞ」

レオノールは自分の限界を超えるぎりぎりのところまで行き、翼を広げてようやくスピードを落とした。

それでもアリシアはまだ落ち続け、宙にとまったレオノールを抜き去った。

「アリシア!衝突するぞ、翼をひろげろ!」

リクはまだ落ちつづけるアリシアに、遠くから叫んだ。

観客の中からは、目をとじてしまうものや、悲鳴まで聞こえてくる。

アリシアの降下はスピードを保ち、そして、地面すれすれで翼をようやく広げ、そのままほとんど直角に舞いあがると、ゴールの横断幕を翔け抜けた。

一瞬、街が静まり返る。

そして、次の瞬間、地面を揺らすほどの、われんばかりの拍手喝さいが巻き起こった。

「いったい何者なんだ、あの女の子は!」

「すばらしかったわ!」

続いてゴールをくぐったレオノールにも惜しみない拍手が送られた。中には涙を流して二人の健闘をたたえるものもいる。

そんな中、リクは興奮さめやらぬ思いのまま、最後の障害の前まで来ていた。

アリシアのあの度胸はどこからくるのか。地面にぶつかりそうで本当にひやひやさせられた。それでもしっかり見せてもらった。アリシア、これが最後のレッスンだ。

リクはアリシアの飛行を心の中で再生し、横断幕をくぐって急上昇した。

角度はまだまだアリシアには及ばないが、今までのリクにはできないほどの鋭角の上昇だった。

「お、今度は男の子だぞ」

「この子もすごいわね」

「ねえ、あの子怪我してるんじゃない?」

まだ、アリシアのゴールに熱狂している観客たちの中、一部の人々がリクに気がついて声援を送ってくれた。

上空のポール手前でスピードをゆるめ勢いでそれを超えると、大きく羽ばたきスピードをつけてから翼をたたみ下降し始めた。そして、レオノールが翼を広げた位置に迫るまで急降下してから、翼を大きく広げ、そしてようやく、ゴールの横断幕をくぐった。

「よくやったぞ、チビ」

「すごかったわよ!」

リクにも暖かい拍手が送られた。先の二人の圧倒的な飛行がなければ、リクの飛行はもっと多くの賞賛を得ていただろう。それでもリクは大いに満足していた。

終わった……。思っていた以上にいろいろ大変だったけど、アリシアのものすごい飛行をたくさん見ることができた。それに何より、そう、なんて楽しかったんだろう!

たくさんのお客さんの歓声に囲まれて、この憧れの飛行大会で飛ぶことができた。アリシアは思ったとおりにすごいムク乗りだったし、僕だってこんなに飛べるという自信がついた。本当に楽しかった……。

係員の案内でムクを降ろす審査員席の裏まで飛んで、着陸場所を見下ろすと、アリシアが血相を変えて白衣の救急班らしき人の手をがっしりとつかみ、ひきずるように一緒に走ってきていた。

あんな度肝を抜く飛行をしてみんなの喝采を浴びていながら、リクの心配だけをして待っていてくれるアリシアがおかしくて、リクは笑顔になった。

アリシアに、よくやった、という思いで上空から手を振り、ルルを着地させようとしたそのとき、突然、遠くから人々の悲鳴と、ガスの大きな噴出音が聞こえてきた。

驚き振り返ると、人々の視線は市街地上空で許可を受けて観戦していた観光用豪華飛行船の一つへと注がれていた。観客たちは指差して悲痛な面持ちでざわついている。

リクはその飛行船に目をこらした。

恐ろしいことに、その飛行船の上部に赤ムクがつっこんでおり、激しい破損が生じていた。どうやら、レース中の勢いづいたムクが、コース外にいる船に衝突してしまったらしい。その部分から大量のアリウムガスが吹き出していて、その噴出音がリクのいる所まで聞こえていた。

「まずいぞ、こんなにアリウムが漏れたら、船が落ちる!」

突っ込んだ赤ムクは、何箇所にも仕切られているアリウムガスのスペースの多くを破壊していた。ガスを供給してもこの排出量では間に合わない。

飛行船は、赤ムクの突き刺さった側をゆっくりと下げていった。船の窓から、慌てて右往左往していた乗客たちが片側へとすべり落ちていく悲惨な光景が見えた。

そして、激しく傾いたままの飛行船は、それ自体の高度を徐々に落としていった。その速度は速くなっていく。

眼下から観客たちの悲鳴が聞こえる。ムクの飛行経路の下に客席はないが、あの飛行船の下はすべて観客で埋め尽くされていた。

「ルル、行くぞ!」

リクはそこへ向かおうとルルの方向を変えた。何ができるかはわからないが、一人でも多くの人を救出したいと思ったのだ。

しかし、次の瞬間、船の落下はなぜかぴたりと止まっていた。

「え?」

観客たちも息を詰め、皆不思議そうに船を見上げている。

奇妙な動きだった。飛行船は停止した高度で、傾いたまま地面と平行に移動しはじめ、観客のいない安全な場所の上空までくると、ゆっくりとした速度で降下していった。大きく傾いてはいるが、それは通常の着陸スピードだ。

アリウムの供給が間にあったのだろうか、しかし、あれだけ大きく天井が裂けているというのに、それを補うほどのガス発生装置があの観光船にあるとは思えない。船はまるで、何かに糸で吊られて操られているかのように、妙な動きをしていた。

リクはふと地上を見下ろした。眼下にいる人々もみな飛行船に目を奪われて、なす術もなく立ち尽くしている。

しかし、アリシアだけは違っていた。

アリシアは両手を飛行船の方向に差し出し、両足を前後に踏ん張って、まるで重い何かを支えているかのように、体をこわばらせている。その手の動きは、船の降下となぜか一致している。それはまるで、アリシアと飛行船の間に見えないつながりでもあるかのように見えた。

リクは、何か神秘的な気持ちでアリシアと船を交互に見ていた。

飛行船は片側からやわらかな着地をし、ようやくその胴体の全面を地面につけ安全に着陸することができた。周囲から歓声が沸き起こる。すぐに救急班たちが駆けつけ、乗客と、激突したムク乗りの手当にあたり始めた。

リクも安堵のため息をもらし、そして、改めてアリシアを見下ろした。

額の汗をぬぐったアリシアは、何事もなかったかのようにリクを見上げ、早く降りてくるよう手招きした。アリシアの一連の動きに気づいたものは誰もいないようだ。

ひとまず、大事故にはならずに済んだことにほっとし、不思議な思いを残してリクは地上へと降りていった。

 

 

相棒の青ムク、ルルを地面にそっと着地させて、リクはゆっくりと鞍から降りた。

「ルル、ありがとうな。お疲れ様」

そう言って、疲労の色が見えるが元気に振舞うルルの首筋をなで、いたわった。

「リク!大丈夫!痛くない?」

駆け寄ったアリシアは、飛行船の事故のことなどすっかり忘れたように、リクの傷を見つめて目に涙を溜め始めた。

「リクが死んじゃうよ!どうしよう!お願い、早く治してあげて!」

かろうじて一人残った救急班の人に、涙をポロポロと流して訴えている。

「大丈夫だよ、アリシア。そんなに痛くはないし……」

そう言った瞬間、妙に腕が重くなり、痛みが体をかけぬけはじめた。

「あれ…?」

へたりこんでしまったリクに、救急班の人が駆け寄り、手際よく服をやぶき傷の手当をし始めた。

「大丈夫かい?これは……、ナイフの傷だね……。大会前の所持品検査をもっと強化しなければならないな。しかし、この傷でよく飛んでいたものだ。ああ……痛みが激しくなってきただろう。気が高ぶっているとアドレナリンが出て痛みを和らげてくれるんだよ……」

救急班の人の声が遠くなっていく。アリシアの顔がかすみ始めた。

「リク!リク!やだよ、死なないで!」

涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、アリシアが叫んでいる。

それを見て救急班の人は笑っていた。

「このくらいの傷で死んだりしないよ。大丈夫だからね、安心して」

そうだよ、アリシア。安心して。

アリシアのおかげで自信がついたから。

アリシアと離れても、僕はこれから、グース号で船乗りとしてがんばることができるから。全部アリシアのおかげだよ……。

そうしてリクは、不覚にも意識を失ってしまった。

 

 

「いやはや、一時はどうなることかと思いましたが、飛行船が無事に着地できて本当に良かった。……・と、どうされましたかな?ジーコフ殿」

飛行船の事故が大事にいたらず、フルーラの市長はほっと胸をなでおろした。そして、隣にいる来賓のジーコフが二人のいる審査員席から、飛行船とは全く反対の方向を向いていることに気づき声をかけた。

「いえ……あそこに、今回活躍した子供たちがおりましたのでね」

ジーコフと呼ばれた男は、あごのひげを撫でながら答えた。

「ああ、確かに。今回の飛行大会はあの子たちのおかげで盛り上がりましたな。いや、ザイオンの方々は残念でしたが、また次回のご参加を楽しみにしておりますよ」

ほがらかに言う市長に、ジーコフは余裕の笑みを浮かべた。

「なに、我がザイオンの兵士もまだまだ鍛錬が足りないのです。そんなことよりも」

そう言って、声をひそめる。

「そんなことよりも?」

人の良い市長は、興味深そうに聞き返す。

「飛人、というのを、ご存知ですかな?」

ジーコフは目をきらりと光らせた。

「飛人、ですか……。確か、アリウム無しでも物を飛ばし、自らも空を飛べるとか……。まあ、都市伝説とでもいうものでしょう。実際にはそんな人間はいるはずがありませんからね」

市長は微笑みをたたえながらも、訳のわからない様子でジーコフに答えた。

それ以上ジーコフは何も言わなかったが、また後方に目をやり冷酷な笑みをその顔に浮かべていた。

 

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